ホーム » アークナイツ » 【アークナイツ】『狼之主(Wlfmster)』を和訳してラップランドに救いを見出す

【アークナイツ】『狼之主(Wlfmster)』を和訳してラップランドに救いを見出す

Still Life with Oranges and Goblet of Wine, 1880-1890s,John Frederick Peto アークナイツ
Still Life with Oranges and Goblet of Wine, 1880-1890s,John Frederick Peto

はじめに

アークナイツはイベントごと,または主要なキャラクターに合わせてイメージソングが作られる.
どれもハイクオリティで楽曲の公開を楽しみにしているプレイヤーも少なくないだろう.

さて,今回和訳に挑戦した『狼之主(Wlfmster)』は日本版で2023年5月23日から公開されるSIDE STORY「シラクザーノ」のイメージソングである.

イベントステージではIS-10,IS-EX-8,そしてIS-S-5の3つでBGMとして用いられている.

また,今回のイベントPVにも編曲(ショート?)バージョンが用いられていることが確認できる.

楽曲提供元のMONSTER SIRENのサイトからフルで曲が視聴可能である.

※本和訳記事は,公式が発表しているガイドラインに基づき作成しております.不備等がございましたらお手数ですがお問合せページからご連絡をお願いいたします.

楽曲情報

作詞:Adam Gubman
作曲:Adam Gubman
歌:Shawn W. Smith

リリース(日本):2023年5月23日
登場作品:アークナイツ(Hypergryph · Yostar スマートフォン向けゲーム)

作詞作曲はアークナイツではお馴染みとなったAdam Gubmanさんである.

歌のShawn W.Smithさんは調べてもあまり情報がない.どうやら歌手と俳優をやっている方のようではあるが……

歌詞(和訳)

以下の和訳はサイト筆者が書いたものであり,公式からの情報ではないことにご注意ください.

You’re tough
but it’s never been about you
You’re free
but cement your feet, a statue
Your rules
but you’d rather make up something[1]
You’re dead
You were never good for nothing

キミは強い
でもそれはキミ自身のものじゃない
キミは自由だ
でもその両の足は まるで置物だ
掟はある
でも本当は適当にやり過ごしたいんだろ
キミは死んじゃった
もうどうしようもないんだね

Double negative
Leading me in circles[2]
Twist infinity
you drive me insane

二重否定
堂々巡り
捻じれた無限の輪
キミがボクを狂わせる

Hit hard, a broken wall[3]
Hit hard, I gave it all
Hit hard, a family tie, oh,
but you’d rather just fight.

一撃,崩れた壁
一撃,全てを捧げよう
一撃,ファミリーの絆
でも本当はただ戦いだけを求めているんだ

Your dirt never washed off in an April shower[4]
You’re crushed by the weight of those you can’t devour
You’re armed[5], but the plan never executed
You’re shocked that you’d hold a gun and never shoot it[6]

キミの穢れは春の雨では洗い流せやしない
食らい尽くせないほどの重圧で押し潰され
着飾ろうとも思い通りに事が運ばず
動揺しているね その手に握られた銃の引き金を引くことすらできないことに

Regulating when the rules are simply saturated
Is it everything or is it just that I’m insane?

必要以上に縛ること
それこそが正義かい?それともボクがおかしいだけかい?

Hit hard, a broken wall
Hit hard, I gave it all
You tried and failed and fell, whoa…

一撃,崩れた壁
一撃,全てを捧げよう
どんなに足搔いたって無駄なんだ……

All of this to say you lost it all to gain some power,[7]
All of this to say you plant a seed and kill the flower,
All of this to say you talk your way into your silence,[8]
All of this is just a ploy to force your hand to violence.

結局は力の代償にキミは全てを捨てたのさ
結局は種を植えても枯らしてしまうのさ
結局は静かに暮らしたいだけなんだ
全てはキミを暴力に誘うための手口に過ぎないんだ

It‘s a waste of time
Thinking you got tough
When it’s never really been enough…
Am I insane?

時間の無駄さ
強くなったと思っている
まだまだなのに……
ボクは狂っちゃったのかなぁ?

Hit hard, a broken wall,
Hit hard, I gave it all,
You tried and failed and fell.

一撃,崩れた壁
一撃,全てを捧げ
足掻いたって無駄さ……

ここから先 『シラクザーノ』のネタバレも含んでいるので注意!

曲の意味

ラップランドからテキサスへ,その執着を存分に歌い上げたもののように思える.

……と言いたかったが考えをまとめているうちに少しずつ変わってきた.先に私の見解を述べよう.この曲は単純なテキサスへの執念を歌ったものではなく,

テキサスを通じて自分を哀れみ,そして前を向くための歌

であったのだろう.そしてそれはラップランドの今までの生き方そのものでもあると私は思う.

では順になぜ私がこのような結論に至ったのか解説(という名の妄想語り)をしていこう.

1.テキサスのことをどう思っているのか

今回のイベントを通じて,今までは必要に執着しているだけで実態が分からなかったテキサスへの感情がはっきりと分かることとなる.

色々とストーリーを通じて考察してもいいが,IS-10の戦闘後会話に明言されているため引用しよう.

アークナイツIS-10 戦闘後 より引用
アークナイツIS-10戦闘後 より引用

と述べている(2023/6/11時点での文).

……しかしだ.私は疑問に思った.ラップランドはテキサスが自分の想像をいつも超えてくる存在だと思っているのに,「ボクの過去」とは如何にと.

というわけで原文を探してみたところこのようになっていた.

“拉普兰德”        用一种诗意的比喻来描述的话,我是你的过去,德克萨斯。

作者:天灾信使水虎 https://www.bilibili.com/read/cv19600854?from=search 出处:bilibili

これを和訳すると,「ある種の比喩を用いるなら,私はあなたの過去です,テキサス。」(翻訳ソフトまま)となる.

ということは,日本語では「テキサスはラップランドの過去のようだ」といった表現になっているが,これは恐らく誤訳で,本来は「ラップランドはテキサスの過去のようだ」という意味のはずである.

これで自分の中では納得がいった.

過去のテキサス,ここではファミリーを捨てる前までのテキサスのこととして考えると,彼女はマフィアらしく暴力にものを言うタイプであっただろう.

そして未だラップランドはそんな過去のテキサス同様,力しか信じることができない存在なのだろう.

この後,

だから別の言い方を選ぼう。

キミはボクの悪夢なんだ。

アークナイツ IS-10戦闘後より

と言い換えている.

ここでラップランドはテキサスのことを悪夢と表現するがこれにはどのような意図が含まれているのだろうか.

これはラップランドはテキサスと昔は同類だと思ってい,そしてそれ故に現在の格差を嘆いての発言であると思う.

テキサスは自分同様 力に頼っていたにも関わらずファミリーを捨て,仲間を得ている.

一方ラップランドは自分からファミリーを捨てることもできず,はぐれ狼にはなったがサルッツォに縛られ続けていた.

誰にでも似た経験はあるはずだ.

例えば勉強.同じような点数だったはずなのにいつの間に相手は自分よりもいい学校に行っていた.

例えば仕事.同期として仲良くやっていたのにいつの間に役職に差が出来ていた.

恐らくはこれらのような,嫉妬や憧れに近い感情なのだろう.

余談

ダブルクォーテーションの部分がキャラクター名,つまり「ラップランド」だ.言われてみると読めそうな気もする……!

2.ラップランドの二面性について

さてテキサスへ向けた感情が分かったところで,ではなぜ彼女はあそこまで執着するようになったのかをラップランドの過去から考えてみたい.

ストーリーで明かされたように彼女はシラクーザでぶいぶい言わせているサルッツォファミリーの娘として生まれる.

サルッツォファミリーのドン,アルベルトはラップランドにサルッツォとして生きるため”教育”を行った.

ちなみにラップランドが狂人として描かれつつも,社交的で礼儀正しいのはこのような幼少期があったためだと考えられる.

さて,幼いループスの少女はそれを父からの愛だと思い見事優秀な殺し屋として育つ.一方で,イベントの個別行動で自信をこう表現している.

アークナイツ シラクザーノ個別行動 より引用
アークナイツ シラクザーノ個別行動 より引用

ここから自身の内面は幼いままなのに,その戦闘能力故に乖離が起こっていることを自覚しているように思える.つまりは自分の仕事が本当は嫌なはずなのにできてしまう,という状態なのだ.

一方で本当に父アルベルトからの教育に対しては感謝をしている(エクシアに倣って嘘は言っていないと考えている)ところがなんとも哀れな狼なのだ.

そう考えるとテキサスファミリー没落時の彼女の感情にも納得がいく.自身は不満を抱いていても抜け出せなかったシラクーザ人としての生き方を,テキサスは見事に抜け出した.

イベントPVでも彼女は

シラクーザという泥沼からは、そう簡単には逃げられないってこと……

https://www.youtube.com/watch?v=dYWnlnyGuvY

と言っており,だからこそ自分は未だ逃げられず,しかしテキサスは見事に逃げ(今回帰ってくるわけだが)たことでそれを評価しているのだろう.


余談

アルベルトはなんだかんだでラップランドに甘いし,ラップランドは父に感謝している.テキサス家の追跡に失敗こそしているが父のために尽くしている.

私はこの二人は違う形ならば普通に仲の良い父娘になれていたのではないかと思ってしまう.

でも、そうはならなかった

ならなかったんだよ、ドクター

だから、この話はここでお終いなんだ

3.和訳(ラップランドver.)

これら考えを踏まえて私はこの歌詞,ラップランドがラップランド自身に向けて歌ったものだと考えなおして和訳してみたくなってしまった.

ただの怪文書でもあるので,興味がある人だけ開いて下さい……

和訳(ラップランドver.)

本当に開かれる人がいるとは!きっとラップランド狂いなのですね.

ラップランドの自己乖離を示すためのYouはあえて「キミ」と訳しています.

~~~

キミは強いけど本当は全部借り物だろ
自由だと思っているけどファミリーに縛られたまま
掟も律儀に守っているけどそれも嫌なはずさ
キミは死体みたいに何も考えず抗えないのさ

違う!違うんだ!
堂々巡りの中
運命は交錯して
ボクは狂っちゃった

一撃,心の壁は音を立て崩れ
一撃,全て捧げますよお父様
一撃,ファミリーを信じていた
でも戦うことしかできないのです

キミはシラクーザの雨でも洗い流せないほど汚れ切っている
サルッツォという重責を負い
着飾ってもうまくいかない
ショックなんだろう,反抗する意思を示すことすらできない自分が

一撃,壁は崩れ
一撃,全て捧げよう
シラクーザの泥沼からは逃げ出せなくとも

結局は力の代償に成長はできてなかった
結局は芽生えるものもなく
静かに暮らしたいだけなのに
全てはあの頃のキミ(テキサス)を取り戻すためさ
(多分ここはラップランド自身に向けてなさそう)

時間の無駄だよ
強くなったと思っているだろうけど
内面は弱いままさ
ボクは狂っちゃったのかなぁ?

一撃,壁は崩れ去り
一撃,全て捧げよう
シラクーザの泥沼からは逃げ出せない

和訳について

今回,細かな点も含めた以下の部分を和訳のポイントとしてまとめてみた.

make up something

イディオム表現で「でっちあげる」という意味を持つ.「なにか適当なものにする」からこのような意味になったのだろうか.今回の訳においては,嘘をつくという意味合いというよりは,その場を適当にやり過ごすという意味合いで拾っている.

Leading me in circles

直訳は「円環に誘う」的な感じになると思う.今回の曲でいえばテキサスとの戦い続ける逃げ出せない運命を比喩しているものと捉えられるので,「堂々巡り」,つまり同じようなことをぐるぐると回ることを表すこの言葉が良いと考えた.

Hit hard

ここかなり迷った部分である.というのも歌詞的な意味が果たしてあるのだろうかと考えてしまった.あくまで曲のリズムや語感のために入れているのではないだろうか.

一応意味的には「強烈な一撃」や「衝撃による動揺」などが考えられるので前後の歌詞とも合ってはいるが,じゃあこのフレーズを何度も繰り返す意味は何なのか.

私的にはテキサスとラップランドの刃が交差する戦闘シーンをイメージしているものではないだろうかと考えたりしている.

よく戦闘中に回想を入れたりするシーンを見ることはないだろうか.私はそんな光景が浮かんだ.そして,ということはちゃんと歌詞として訳すのは難しいと思った次第である.

Your dirt never washed off in an April shower

“April showers bring May flowers”ということわざがある.これは「4月の雨が5月に花を咲かせる」という意味で,恵みをもたらす存在として捉えられる.また比喩的に「悲しみの後に幸福が訪れる」ことを意味している.

和訳には「春の小雨」としているが,よりしっかりと意味を捉えるならそんな幸福をもたらす雨でさえキミ=テキサスの不幸は拭えないということを言っているのだろう.

You’re armed

直訳すると「武装した」などになるが,まぁ味気ないかなと思った.今回のアナウンスPVの雰囲気に合わせた和訳をしてみた.

You’re shocked that you’d hold a gun and never shoot it

ここが訳するにあたってどこまで意訳しようか迷った部分だ.結果的にはほぼ直訳にしたが,意味としては「力はあるのにそれを使えない自分への動揺」などと思われる.

All of this to say~

「言いたいことの全てというのは~」という直訳の意味から,「要するに」⇒「詰まり、結局は」と訳すことにしている.

you talk your way into your silence

英語で”talk (someone’s) way out of ~”という言葉がある.意味としては「何らかの罰などから逃れるために上手く説得する」みたいな感じだ.

さて,この歌詞ではこの表現を少し変え, “into”という表現にしている.ということは意味も反転して「何らかの得などを得るために上手く説得する」と捉えることができるだろう.

今回の訳では「説得する」ということよりも,立ち回りなどについて言及しているだろうと思い,それに合わせた訳としている.

編集後記的なもの

今回はアークナイツ シラクーザので用いられた楽曲『Wlfmster(狼之主)』を和訳してラップランド自とテキサスの関係を考えてみた.

実装当初から長らく内面を明かされることはなったが,今回ただの狂人ではなく一人の少女(精神的)としての一面も見せているのが良かった.私自身イベント自体が好きなことと,ラップランドさんには大変お世話になっていたこともあり和訳,妄想に力が入ってしまった.

彼女自身イベントでの出来事を通じて前(?)を向けたので,今後の活躍に期待ですね.

その他アークナイツ関連の記事はこちら
ぜひお気に入りの一曲を探してみてほしい(記事が無かったらご連絡ください!作ります!).

このサイトの和訳記事では,和訳の正確さ」と「読者の考える余地に重きを置いています.
読者が正確に楽曲を捉え,理解を深めてもらえるよう,和訳にミスがあればぜひご連絡いただければ幸いです.

お読みいただきありがとうございました!

コメント

  1. ぽぽ より:

    翻訳者の解釈付きの和訳とか豪華すぎる
    ラップランドの理解の助けになると思いましたありがとう

    • NetRiv. より:

      コメントありがとうございます!
      和訳はどうしてもその人の考えが影響してくるので、解説にも力を入れて作成していきたいと思います。

タイトルとURLをコピーしました