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【アークナイツ】『Undertopia』を和訳して過去の痛みも引き連れて進む

楽園 – ルーラント・サーフェリー (1618年) アークナイツ
楽園 – ルーラント・サーフェリー (1618年)

はじめに

アークナイツはイベントごと,または主要なキャラクターに合わせてイメージソングが作られる.
どれもハイクオリティで楽曲の公開を楽しみにしているプレイヤーも少なくないだろう.

さて,今回和訳に挑戦した『Undertopia』はパゼオンカをイメージした曲となっている.

パゼオンカは,SIDE STORY『理想都市 -エンドレスカーニバル』ではドタバタお嬢様のようなキャラクターでありつつも,自身の過去に未だ捕らわれていたという脆い一面もあった.

和訳を通して彼女のより詳しく理解できるかもしれない.

山々と壁を越え、檻の扉が揺れる。

歌声が渦を巻いてそっと響く――「舞い落ちる雪は どこへ帰るのだろう」

https://youtu.be/GR2e-cp2TS4
動画詳細より

※本和訳記事は,公式が発表しているガイドラインに基づき作成しております.不備等がございましたらお手数ですがお問合せページからご連絡をお願いいたします.

楽曲情報

作詞:Adam Gubman
作曲:Adam Gubman
歌:Moonlist
リリース(日本):2023/01/28
登場作品:アークナイツ(Hypergryph · Yostar スマートフォン向けゲーム)

※曲名の『Undertopia』は”Under”(下の)と”Utopia”(楽園)をかけた造語であると思われる.

歌詞(和訳)

以下の和訳はサイト筆者が書いたものであり,公式からの情報ではないことにご注意ください.

Through the thunder, on the wind
Baby wolf all in a spin
To run run run away from here
Run run run away from here

雷の中,風に乗って
子狼は転がり続ける
ここから逃げ出すために
ただただ駆け続けましょう

And you fight back through the rain
A struggle, hide the pain
Run run run you’re pushing through
Run run run away from you
Softness is fields of surrender
Under the stars, through the hills, over walls

雨にも負けず
もがいて,されど痛みは見せず
ただただ進み続ける
だんだん自分も失い
やさしさに包まれて全て投げ捨てしまうの
星空の下,丘の向こう,壁を越えた地で

Little pup, your head is in the sand
Your pads are strong, you stand
Clawing through, your chains are broken
Free is where your confidence is crowned
A queen of hills, renowned
Nothing here can
Keep your heart in a tiny cage

幼い子狼,貴方は目を逸らしている
本当はもう一人で立てるはずなのに
爪を立てれば鎖も解けるでしょう
貴方は自由に生きてこそ輝くのです
人はこう言います,丘の上の女王と
ここには何もなく
心は未だ囚われたままなのですね

A place she’s never been
Where it’s safe to start again
Run run run it’s not so far
Run run run from where we are

まだ見ぬ場所へ
再び歩き出せるような そんな場所へ
お行きなさい そう遠くはないですから
お行きなさい 自分すら置き去りにして

It’s a promise, cross the moors
Hunting what you know is yours
Run run run it’s yours to make
Run run run it’s yours to break

約束をいたしましょう,荒野を渡って
貴方が貴方である証明をするの
駆け続けなさい (これからの)貴方を作り上げるのです
駆け続けなさい (今までの)貴方を壊すのです

Strength is the nothing you left there
Carry the sun on your back, start again

力は貴方に何も残してくれない
太陽と共に,また始めましょう

Little pup, your head is in the sand
Your pads are strong, you stand
Clawing through, your chains are broken
Free is where your confidence is crowned
A queen of hills, renowned
Nothing here can
Keep your heart in a tiny cage

幼い子狼,貴方は目を逸らしている
本当はもう一人で立てるはずなのに
爪を立てれば鎖も解けるでしょう
貴方は自由に生きてこそ輝くのです
人はこう言います,丘の上の女王と
ここには何もなく
心は未だ囚われたままなのですね

If this was forever
You’d sever the tether
We’d cherish the wilds and explore
From forest to ocean
Our plan is in motion
Becoming who we really are
We rule through broken hearts

これが永遠なら
貴方は繋がりを断ってしまうのでしょう
わらわ達は留まることを知らないのですから
森を抜けて大海へ
わらわ達の物語はまだ終わっていないのですよ
本当の自分になりましょう
傷ついた心も引き連れて

Little pup, your head is in the sand
Your pads are strong, you stand
Clawing through, your chains are broken
Free is where your confidence is crowned
A queen of hills, renowned
Nothing here can
Keep your heart in a tiny cage

幼い子狼,貴方は目を逸らしている
本当はもう一人で立てるはずなのに
爪を立てれば鎖も解けるでしょう
貴方は自由に生きてこそ輝くのです
人はこう言います,丘の上の女王と
ここには何もなく
心は未だ囚われたままなのですね

考察的なもの

曲の意味

没落貴族であり,命を狙われ続けた地上での生活.
一方で地下でドゥリン人達と過ごす日々はあまりに優しく,彼女はそこに留まった.

しかし心のどこかで葛藤があったのだろう.このままで良いのか.そんな揺れ動きと,そして過去との向き合い方が伝わる一曲であった.

ここでは,曲で登場する一人称,二人称について触れながら意味を紐解いていく.

曲における登場人物

この曲では,「子狼」,「貴方」,「わらわ達」,そして「丘の上の女王」が出てくる.恐らくこれは全てパゼオンカのことである.また,歌詞中にはないがこの歌を「貴方に向けて」歌っているのもパゼオンカであると考えらえれる.

しかしながら,これらは全てしっかりと使い分けはされているのに注意されたい.私の解釈では以下のようになると考えた.

  • 子狼
     地下に辿り着く前のパゼオンカ.歌の冒頭で嵐や風から逃げ惑っているのでこう予想できる.
     アヴドーチャ・ニコライェヴナ・イワノワであった頃と言えよう.
  • 貴方
     地下でドゥリン人達と過ごしていた頃のパゼオンカ.エンドレスカーニバル始~中頃か?
     偽名を用いていた,アヴドーチャ・レザーペンであると捉えておこう.
  • わらわ達
     過去と今のパゼオンカのこと.
  •  わらわ(歌詞中にはなし,補足のため)
     今のパゼオンカ.エンドレスカーニバルで言うならガヴィルに諭されて地上行きを決心した後.

このように,自分を大過去(地下に行く前),過去(地下で過ごしていた頃),現在の3つに分けて歌っているように考えられる.これにより,曲への理解にも見通しが立つだろう.

丘の上の女王とは

歌詞中で,

A queen of hills, renowned

このような部分がある.サビなので何度も歌われるため,ある意味では重要ともいえる.
訳では「丘の上の女王と,そう呼ばれている」になるのだが,この「丘の上の女王」とは何だろうか.

私はパゼオンカの孤独と自信のなさを表した部分であると考える.

[孤独であるということ]

これは「丘の上」だからだ.丘の上は「点」である.ほかの人たちは丘の周りで繋がりがあるのを上から眺めることしかできないという寂しさが感じられた.

[自信のなさ]

Free is where your confidence is crowned

からも分かるように,自由ではない(地下に身を置いている)自分には自信がないようだ.
それだけでなく,孤独を表したいなら丘ではなく,山や塔の上でもよいのに,なぜか中途半端な高さの丘を選んでいる.この高さがそのまま自信を表しているのではないだろうか.

パゼオンカはどう決断したのか

全体を和訳してみた感じだと,過去に捕らわれず前に進んでいく曲のようだ.もちろん大まかにはその捉え方で良いのだが,細かく見てみると,より彼女の心を知ることができる.

If this was forever
You’d sever the tether
We’d cherish the wilds and explore
From forest to ocean
Our plan is in motion
Becoming who we really are
We rule through broken hearts

最後のサビの前の歌詞だが,これが全てを物語っていると言っても過言ではない.上から順に解説していく.

If this was forever You’d sever the tether

ここの”this”は地下での気ままな生活のことだろう.あんなに好きだった地下での生活も,ずっと続いたら嫌になってしまう.これは単に飽きが来たというわけではなさそうだ.昇進後会話1でも似たようなことを言っている.

We’d cherish the wilds and explore From forest to ocean

わらわ達とは前述のとおり,「過去と今のパゼオンカ」のことだと考えると,昔から変わることなく彼女は冒険し続けたいという心があるように受け取れる.ほかの部分からも分かるように,地下での生活に本当は満足しておらず,どこか自分を騙していたのだろう.

Our plan is in motion

冒険したいという”plan”はまだ終わっていない.そう,地下の世界で終わらせてなどいないのだ.

Becoming who we really are We rule through broken hearts

ここが今回和訳をして解説を書いている中で一番の推しポイントです!!!

まず”who we really are”.ここが”you”でも”I”でもないのが良い.過去と今の自分,両方にとって本当の自分になろうとしている.過去の自分にも偽ることなく進んでいこうという気持ちが◎.

次に後半の文を和訳すると「傷ついた心も連れて(従えて)」みたいな意味になる.これがいい.

パゼオンカはイベント中頃までは,過去と決別してアヴドーチャ・レザーペンとして生きようとしていた.だが,この歌詞からはアヴドーチャ・ニコライェヴナ・イワノワであった頃の,過去の自分も忘れることなく,一緒にこれからは進んでいこうという気持ちが伝わる.

過去の痛みも引き連れて行くというのはとっても難しいだろう.地下で辛かったことを忘れて生き続ける方がどんなに楽だっただろうか.それでもパゼオンカはその道を選ばず,進んでいくと決めた.

イベントストーリーを読んだ段階では前に進めてよかったね!くらいにしか思っていなかった.
ちょっと今回は和訳してみて本当に良いものだったなと思っている.

和訳について

パゼオンカのキャラクターに合わせてか,ちょっと詞的な表現が多いという印象があった.
和訳に際しても,その影響が出ているので解説を丁寧にしていきたい.

Softness is fields of surrender

直訳だと「柔らかさは降参の地である」になり,意味が分かるようでわからない.
私は”Softness”は「地下での気ままな生活」のことであると捉えた.そして”surrender”で諦めや降参なのだが,これは現実に向き合い頑張ることを言うのだろう.

つまり,地下の生活で甘えて生きていることを振り返った歌詞だと言えそうだ.

Little pup

子猫に対する「キティ―」,子犬に対する「パピー」.この”pup”は”puppy”の別の表記である.

ちなみに私は今回調べていて初めて知ったのだが,パピーは何も犬だけでなく,オオカミやキツネなどのイヌ科の動物の子供に対してなら使えるらしい.ふ~ん.

your head is in the sand

イディオムですね.「迫る危機や困難などが自然に解決することを期待する」つまり「目を逸らしている」ことを意味する.

私が調べたところでは,昔の迷信でダチョウは危険が迫ると地面に頭を隠すと思われていたことが由来であると書いてあった.面白い表現ですね~.

Your pads are strong, you stand

“pad”は形を整えたり,破損を防ぐものである.それが”strong”で,貴方は立っているということで,「しっかりした支えがあって,貴方は立っている」となる.もうちゃんと自立できるのに(地下の生活に甘えている),といったニュアンスであろう.

Free is where your confidence is crowned

直訳では「自由は貴方の自信が冠を得る場所」になる.前述のパゼオンカの自信のなさも踏まえて,彼女が本当に意味で輝き,自分らしく生きられる場所が”where you confidence is crowned”と考えた.

Hunting what you know is yours

この”Hunting”は「狩り」ではなくて「探求」とかの意味の方であると捉えた.この「探すこと」は「貴方のもの」であると言っている.そして探すのは”what you know”なので「貴方が知っていること」.

つまり「自分のために自分を探しなさい」みたいな意味になるのかなと思う.

Run run run it’s yours to make
Run run run it’s yours to break

訳の方にも書いてしまったのだが,この”yours”は過去とこれからの二つを意味していると考えられる.明確な根拠がなくて申し訳ないのだが,文脈からみてそうなのかなと思ったし,訳していてこれが一番自然になった.

You’d sever the tether

直訳では「あなたは綱を切るでしょう」になる.これも調べた感じイディオムとかではなさそうだが,結構日本語的な捉え方で間違いないと思う.例えば日本だって恋を「赤い糸」と表現するし.頼みの「綱」という言葉があるし.

We’d cherish the wilds and explore

直訳では「野生と冒険を愛おしむ」になる.意味としては,パゼオンカは一つの場所に留まらずに常に放浪したいタイプであることを言いたいのだなと捉えた.

Our plan is in motion

「私たちの計画は動いている」ならば止まっていない,終わっていないということだ.

ここの”plan”を「物語」と訳した.これはパゼオンカ自身が文字を書いて生きる人であり,自身の人生の構想を物語の構想と照らし合わせていそうだなと思ったためである.

決して翻訳にかけたら「物語」と訳されていいじゃんと思ったからではないよ

We rule through broken hearts

「私たちは傷ついた心も従える.」となる.”rule”は日本語でルールと言うように,規則などで制限することを意味する.つまり過去のトラウマにより傷ついた心さえも制してみせるといった意味になる.

編集後記的なもの

今回はアークナイツ パゼオンカのイメージソング『Undertopia』を和訳して彼女の持つ二面性,そしてこれからの生き方に触れてみた.

やはり過去の自分諸共愛して進んでいこうという気持ちが良すぎる……これはイベントを読んだだけではわからなかったので,今回の訳は非常に有意義であった.

彼女がこれから歩む道はきっと辛いこともあるだろうが,きっと乗り越えられよう.

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ぜひお気に入りの一曲を探してみてほしい(記事が無かったらご連絡ください!作ります!).

このサイトの和訳記事では,和訳の正確さ」と「読者の考える余地に重きを置いています.
読者が正確に楽曲を捉え,理解を深めてもらえるよう,和訳にミスがあればぜひご連絡いただければ幸いです.

お読みいただきありがとうございました!

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